「全世界的に、同時に同じ情報と戦略をもってコミュニケートする」ことは日本でもできる?



表題の言葉は、伊藤美恵さんの「情熱がなければ伝わらない!アタッシェ・ドゥ・プレスという仕事」という著書で紹介されていました。フランスのアタッシェ・ドゥ・プレスの大物、シルヴィ・グランバックさんから言われた言葉です。

「マダム伊藤、私たちの仕事はね、全世界的に、同時に同じ情報と戦略をもってコミュニケートすることが重要なの」

― シルヴィ・グランバック(p127)

この言葉をパッと見た時、「ん?本当にそうかな?」と思いました。というのは、自分が関わっている海外発サービスの日本展開の仕事では、本社から来た情報をそのまま日本にも流しただけでは良い効果は得られないことが多いからです。


「全世界的に、同時に同じ情報と戦略をもってコミュニケートする」というのはどういう意味なんだろうなと思って、とりあえず続きを読んでいくと、納得がいきました。


上記の言葉の紹介の後に、「ファッションの世界は、受け手も送り手も完全なノー・ボーダー〜国境無き時代となりました」と前置かれて、次のように述べられています。

「そういった時代のアタッシェ・ドゥ・プレスは、海外のプロたちと同等に渡りあえるだけのレベルとノウハウを持っていなければなりません。「日本では違うのだ」と旧来の方法を押し通しても、笑われるか無視されるかだけです。
 かといって、海外ブランドの日本進出のPRを、本国にある本社の言われるままに動いているだけでは、私たちの存在理由はなくなってしまいます。
 本国の意向を十分に理解、咀嚼して、なおかつ日本のメディアやユーザーの実情に即した対応をしていくこと。それが重要です。ただ、それにしても、まずは海外のアタッシェ・ドゥ・プレスのクオリティに達しないことにはスタートラインに並ぶこともできません。そこに立ってはじめて「全世界的に、同時に同じ情報と戦略をもってコミュニケートすること」ができるのです。」
(「情熱がなければ伝わらない!アタッシェ・ドゥ・プレスという仕事」p128-129)

つまり、本国と日本との間に立って、「全世界的に、同時に同じ情報と戦略をもって」発信される情報を、いかに日本の人に理解してもらえるような形で「コミュニケートする」かが重要ということだと思います。それができず、ただ単に情報を翻訳(文字通りの翻訳、文字面だけの翻訳)をするだけでは意味があまりありません。


逆に言えば、そこにこそ、間に立つ人の存在意義があります。対象の商品やサービスはどういうコンセプトで作られているのか、本社はどういう点をアピールしてほしいのか、また、誰の役に立つのか、どう役に立つのかといったことを踏まえた上で、日本で伝わりやすいような形にして伝えていくかが大事です。「翻訳」より「翻案」と言った方がいいかもしれませんし、時にはかなり作り直すことも必要です。


そこでは、よく言われることでもありますが、「変えて良いもの」「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」が区別が重要です。その区別をした上で、前者をどんどん変えていくことによって、市場にあわせてコミュニケートするということだと思います。


同書では、また別の著名なアタッシェ・ドゥ・プレスのジャン・ジャック・ピカールさんにインタビューしていますが、その中で次のような言葉がありました。

「ある海外ブランドの世界的なイメージが、地域の特性とのコミュニケーションを図る上で妨げになることは、ほとんどありません。大切なことは、世界的なメッセージが正確に認識されることであり、そのためにアタッシェ・ドゥ・プレスは、その国の文化や住む人々に適したコミュニケーションツールを生み出し、理解してもらわなければならないのです。たとえば、日常生活でも、両親が子供に麻薬の危険性について注意する時、15歳の息子と7歳の娘とにでは、同じ言葉や表現を使ったりはしないのと同じことです。」
― ジャン・ジャック・ピカール氏(「情熱がなければ伝わらない!アタッシェ・ドゥ・プレスという仕事」p197)

この例では、「麻薬はダメ、危険」ということが変えてはいけないメッセージであり、その説明の言葉や表現が変えて良いもの、変えるべきものでしょう。この例は分かりやすく、なるほどなとストンと腑に落ちました。しかし、子育ての比喩っていうのは万能ですね。


あと、最後に、プレス・リリースの話が面白かったです。イタリアでのファッションショーにおける日本のジャーナリスト向けのリリースの話です。

「多くの場合、本部からのプレス・リリースが届くのはショーの始まる数時間前。これを本番までに訳し、何十部とプリントしなければなりません。
 前線基地となる現地のほてるの部屋は戦場のような様相を呈します。本部からのプレス・リリースを訳すだけなら簡単じゃないか、なんて思ったら大間違い。イタリア語やフランス語の、直訳しただけでは意味不明な言葉が並べ立てられた文章、詩的とも言えるかもしれませんが、イメージに走りすぎた文章が混じったリリースが送られてきて。これをなんとか日本語で通じるように訳すわけです。」(p164)

これ、かなり共感しました。自分の場合もいつも直前で送られてきて、しかもイマイチなんで必要なのかが分からないパラグラフや表現とかがあったりして、苦労します。また、送られてくるのも前日であることが多く、いつもバタバタして本社に苦情を言ったりしています。ただ、数時間前に比べればまだマシだなと(笑)


市場にあわせたコミュニケーションと翻訳というのは中々難しく、面白いテーマなのでまた折をみて考えてみたいと思います。

新しいビジネスの出所は欧米ばかりではない―メキシコ発のキッザニア




「優れた企業は「日本流」」という本で貯蓄に関して面白い事例が紹介されていました。キッザニアという子供の職業体験パークでの話です。
キッザニア東京
キッザニアはメキシコが本場でアイデアを日本に輸入したそうですが、メキシコと日本では子供の反応が違うとのこと。具体的には、職業体験を行った後、報酬としてもらえる「キッゾ」という疑似通貨の使い方。もらったお金で遊んだり買い物したりできるらしいんですが、使い方が以下のように異なるそうです。

  • メキシコの子供…稼いだお金を全部使いきって帰る
  • 日本の子供………銀行に貯金して帰る

本の中では

「ラテン系民族と島国系民族の違いということかもしれないが、使い切らずにあとに残そうという気持ちは、大人たちの貯蓄率の高さにも通じている気がして興味深い。」(p44)

と述べられていますが、この当否は置いておいて、こういう違いは興味深いです。


このキッザニア、メキシコが本場ということは知らなかったんですが、グローバルな展開をみていると面白いです。出店の場所と順番は次のとおり。

上記の他、今後次の地域でも出店が予定されているそうです。

(参照:Wikipediaキッザニア」の記事 日本語版 英語版
それぞれの出店場所での子供の様子とかお金の使い方とか比較したら面白そうです。インドとかってどうなんでしょうか…


ところで、キッザニアを日本で立ち上げた方は60歳を過ぎてからの再起業でこの事業をやられているんですね。以下のインタビュー記事に詳しいですが、この話も面白かったです。

「60歳を超えてゼロからの再起業に挑戦!「キッザニア東京」、豊洲の地に誕生」


いくつか印象に残った点はありますが、国民性の話とからめて下記の点が興味深いです。

そして帰国後、私はすぐに「キッザニア」オープンのためのスポンサー探しを開始します。そこでまずぶつかったのは、「なぜメキシコなのか?」とい うこと。誰もが新しいビジネスの出所は欧米であるという色眼鏡に毒されているんですね。まずは、この壁を突破しながら、「キッザニア」の社会的必要性を訴え続けました。

欧米をチェックしてキャッチアップしていくというのも1つのやり方ではありますが、注目している人はたくさんいます。逆に、欧米以外の地域からアイデアやビジネスを持ってくるというのは相対的に独自性を高めやすそうな気がします。そういう意味ではインド発のビジネスに関わっている自分は面白い位置にいるのかもと思う今日この頃なのでありました。

老舗企業こそ変化を恐れないのかもしれない(「百年続く企業の条件」より)




「百年続く企業の条件 老舗は変化を恐れない」の老舗に関するアンケート結果が面白かったです。これは、帝国データバンク資料館によるアンケートで、1912年までに創業、設立した企業の中から4000社を抽出し、814社から回答を得たものです。
興味深かったのが「老舗企業として大事なことを漢字一文字で表すと?」という質問に対しての回答です。トップ10は次のとおり。

  1. 信 197社
  2. 誠 68社
  3. 継 31社
  4. 心 28社
  5. 真 24社
  6. 和 23社
  7. 22社
  8. 22社
  9. 忍 19社
  10. 質 18社

圧倒的一位は「信」、次いで「誠」「継」「心」「真」と続きます。この辺はなるほどという感じですが、面白いのは「変」と「新」が入っていること。実際に企業に話を聞くと、次のような答えが返ってくるとのこと。

「うちは老舗といわれるけれど、変革し続けてきたからこそ現在があるのですよ」(p18)

事例の企業からも次のような声が紹介されています。

「老舗といえども中小企業だから、耐えなきゃならないことばかりですよ。でもそこで過去を振り返るだけだったら、結局今までやってきたことの検証しかできない。世の中の変化が激しいから、次のことを考えていかないと埋没してしまう」(p111)
―エイラク代表取締役社長 細辻伊兵衛氏

「360余年という伝統は、守ることではなく変化に対応するための"革新の連続"だ」(p117)
ヤマサ醤油 代表取締役社長 濱口道雄氏



また、創業時から変えたもの、変えていないものというアンケートでは、「一部変えた」「すべて変えた」をあわせると次のようになります。

  • 販売方法 78.7%(「一部変えた」65.6%、「すべて変えた」13.1%)
  • 商品/サービス 72.4%(「一部変えた」62.4%、「すべて変えた」10.0%)
  • 主力事業の内容 56.3%(「一部変えた」48.8%、「すべて変えた」7.5%)
  • 製造方法 55.3%(「一部変えた」45.7%、「すべて変えた」9.6%)
  • 家訓、社訓、社是等 27.8%(「一部変えた」21.3%、「すべて変えた」6.5%)

もちろん、「すべて変えた」という回答は大勢ではなく、10%前後の割合ですが、逆に言うと10社に1社が何かを「すべて変えた」経験を持っているということになります。また、社名や屋号を変えた企業もあわせると46.7%と半数近くにのぼっています。


分析では、「逆に、質問した項目すべてについて、「変更なし」の企業が3.1%あるのが、驚きといえるかもしれない」(p26)と述べられているように、変えないことの方が珍しいと言ってよいのかもしれません。


また、「老舗の強みは何か」という質問に対する回答では、

  1. 信用 73.8%
  2. 伝統 52.8%
  3. 知名度 50.4%
  4. 地域密着 43.1%
  5. 信頼が厚い 37.5%

と続くのはなるほどという感じですが、「進取の気性がある」も9.8%入っています。また、数は多くないものの「変化に対して慣れていること」という回答もあったそうです。


さらに、「今後も生き残るために必要なもの」としては、「信頼の維持、向上」が65/8%で1位で、これもなんとなく予想できますが、面白いのは2位です。2位は、「進取の気性」で45.4%入っています。これは強みとしてあげる企業もありましたが、今後必要なものとして強く意識されているようです。


この結果に関して、本書では次のように述べられています。
「伝統を重んじて変化を避けると思われがちな老舗企業だが、実際は時代に合わせて変化を続けなければ生き残れないということを、身をもって知っているからこその高い回答率であるといえる。」(p33)


「老舗企業」=「保守的」とは限らないのです。むしろ、革新を続けてきたからこそ生き残っている企業も多いことがこのアンケートから示唆されています。一見逆説的に聞こえるかもしれませんが、老舗企業こそ変化を恐れないのかもしれないと感じました。むしろ、スタートアップ企業が一度成功した後の方が変化に対する抵抗が強いのかもしれません。


ただ、どんな企業も、まったく変わらないとか全部変えるとかいう1か0かの話ではなくて、変えるところを変えて、変えないところは変えないという話なのだと思います。百年、二百年、三百年と続いていくには、何を変えて何を変えないのか、この見極めが一番大事なんだろうなーと感じました。


ところで、最初の漢字の話。変わったところでは「涎」(よだれ)というのもあったらしいです。解説では「近江商人や大阪の商人がよく使う「商いは牛の涎」(商売は牛の涎が細く長く垂れるように気長に辛抱せよという意『広辞苑』」(p19)と書いてある(「百年続く企業の条件」の老舗に関するアンケート結果)これはこれで面白かったです。

組織における交換記憶とコミュニケーションのコツ




積読だった「急に売れ始めるにはワケがある」を読み終わりました。
ティッピング・ポイントを超えるための3つの原則(少数者の法則、粘りの要素、背景の力)については色んなところでも紹介されているので置いておいて、それとは別に面白かった「交換記憶」の話について書いておきます。


交換記憶とは

著者の言葉を借りると、
「他人を通じて情報をたくわえている」(p252)
「暗黙の連合記憶システム」(p253)
です。


交換記憶を試す実験

カップルや親しい人同士では自然にこれを行っているそうですが、上の説明だけだとちょっとピンときません。具体的な例として紹介されているヴァージニア大学の心理学者、ダニエル・ウェグナーの実験について読むと納得がいきました。


この実験では、3カ月以上交際が続いている59組のカップルを対象としました。半分は元の組、半分は知らない人同士の組で、64の短文を読んでもらって覚えていることをすべて書き出してもらいました。その結果、互いに知っているペアの方が、互いに知らないペアよりかなり多くの項目を記憶できました。


人の記憶を活用

つまり、お互いに知っているペアだと役割分担をして、2人分の記憶を活用しているのです。これはかなり面白いなと思いました。組織にも応用でき、互いによく知っている組織だと、効率的に情報を記憶、処理できているというのが主な論点です。ウェグナー氏の言葉を借りると、「効率性の高い制度的な交換記憶」(p255)を活用できるのです。


なぜ、効率が高くなるかというと、ウェグナー氏は次のように述べています。

「それぞれの人員がある特定の仕事や事柄に関して集団から認知された責任を負っている場合、効率性が高まるのは当然だ」
「それぞれの分野を処理能力のある少数の人々に任せておけば、その分野の責任にも、そのつど担当者を指名するより持続性が出てくるのです」p255



つまり、それぞれのメンバーが専門性と責任を持って自分の分野に対処していく。どの話を誰に任せればいいか明確になっているので物事の処理速度が速いということでしょう。さらに、このように専門性と責任を明確化することで、新しい情報が入ってくる度、物事を処理する度にさらに専門性を高め、効率性を増すことができます。


これについては、家族の例も分かりやすかったです。家族の中で息子がコンピューターに一番詳しいというケースはあると思います(私のうちもそうです)が、別に息子が最初から専門家だったわけではありません。最初は親よりちょっと詳しい程度だったでしょう。ただ、相対的に詳しいことにより、新しい情報が入ってくるとその息子が処理していくことになります。例えば、最初はインターネットへのつなぎ方程度しか知らなかったのが、クラウドサービスの活用方法などにも習熟していくことはあるでしょう。こうしてどんどん専門性を高めていくことになるのです。


企業組織における交換記憶

では、実際に組織ではどのように交換記憶が活用されているのでしょうか。その例として、ゴア・アソシエイツ社が紹介されています。ゴア・アソシエイツ社は、年商10億ドル(著作時点)に達する株式非公開のハイテク企業です。防水繊維のゴアテックスやコンピューター・ケーブル用の特殊絶縁皮膜などの製品を製造しています。


古参のアソシエイトのジム・バックリー氏の言葉が面白いです。

「それはただ誰かを知るということではないのです。相手がどんな技術と能力と情熱を持っているかを十分によく知るということなのです。何が好きで、何をしていて、何を望んでいて、何が本当に得意なのか、そういうことです。あいつはいいやつだ、というようなことではありません」p256



また、著者も次のように述べています。

「どんな会社でもこれほど緊密な人間関係が必要だというわけでもないだろう。しかし、ゴアのように、技術革新の能力と気難しい先端の消費者への迅速な対応によって市場で優位に立とうとするハイテク企業では、この種の組織ぐるみの記憶システムはきわめて重要なものだ。それがこの会社をすばらしく効率的にしているのだ。
 つまり、共同作業をより容易にしているということだ。物事を仕上げたり、作業班を集めたり、問題の答えを探ったりするときに速やかに動けるということだ。会社のある部門にいる人がまったく異なる部門の印象や専門知識を簡単に知ることができるということだ。」(p256)



こうした仕組みは、特に変化が速いハイテクやITの業界で生きてくると思います。毎日のように新しい情報が入ってくる中で、それに対していちいち対応を議論していたら出遅れてしまいます。これは誰に任せる、それは誰に任せるというのがある程度決まっている方が動きもとりやすいでしょう。


逆に、変化が少ない業界であれば、記憶しておくべき情報は決まってくるので交換記憶を活用する必要はなく、個人レベルの記憶で対処可能な範囲が多いでしょう。ですから、変化の激しいIT業界にはうってつけの概念なのではないかとも思いました。


交換記憶は分かった、でもそんな組織わけわからんくない?

この話だけ聞くと、確かに良さそうだなと思いますが、裏を返すとかなり属人的な仕事のやり方になるということです。しかも、お互いによく知りあうためには無駄な組織階層を省いて、フラットに付き合えるようにしたり、情報をできるだけ流通させるようにする必要があります。


少ない人数ならまだしも、一定規模以上の組織では難しくないのでしょうか。実際、ゴア・アソシエイツのアソシエイトのバート・チェイス氏も、次のように述べています。

「こういう話をしたら、すぐに帰ってくるのが、"ずいぶん混沌とした会社だな。上下関係もなくて、いったいどうするんだい?"という反応です。」(p257)



しかし、チェイス氏は、こうも続けます。

「でも、混沌ではない。問題はないんですよ。」
「ここで働いていないと、わかりにくいかもしれない。人の長所を理解すれば得になるということなんですよ。要は、どこに行けば一番いい助言が得られるか、それを知ることなんです。人を知っていれば、それができるんですよ」(p257)



確かにこうした組織づくりをすることで、一見混沌に見える部分はあるでしょう。情報が整理されていない部分も出てくるはずです。


この人に聞け!という組織づくりでうまくいく?

実は、私が働いているZOHOの開発センターもまったく同じような雰囲気です。1,000人前後のエンジニアが働いていますが典型的なのが組織図がないことです。


これは何かお客さんとプロジェクトをやる時にいつも聞かれるのですが、説明に苦労します。誰も全体像を把握していません。CEOですら、チーム数は大体の数で答えます。常にチームの数自体も増えたり減ったりしていますし、メンバーも入れ替わったりしているので、ある時点で把握したとしてもすぐに変わってしまうのであまり覚える意味がないのです。


このことと、誰に何を聞けば良いか分かるようにするというのは矛盾しているように聞こえるかもしれません。私も、最初は、組織図もないし、チームごとの座席図すらなくゴチャゴチャしているので、何か情報が必要な時にまずどこに行けば良いのかすらわかりませんでした。最初は、組織図がもっとちゃんとまとまってたら良いのになーと思ってました。でも、そうではないんです。


組織図から探すという概念を捨てて、誰か人に聞けば良いんです。というか、人に聞くしかないんですが(^ ^;)
聞いてしまえば、誰に聞いても、
「それなら○○に聞くと良いよ」「○○がよく知ってるよ」
といった回答が返ってきます。聞いた人が良く知らなくても、次に誰に聞けば良いかはわかり、それをたどっていくと、最終的には詳しい人に行きつけるのです。


また、ここがすごいと思うのですが、誰にいつ何を聞いても親切に答えてくれるのです。もちろん、忙しそうな時はありますが、笑顔で1分待ってと言われ(まあ大体その後10分くらい待つわけですが)、待った後はかなり懇切丁寧に教えてくれるのです。人に任せ、その人に聞く、また、自分も自分の専門については聞かれるという、聞く、聞かれるというコミュニケーションが当たり前のものとして浸透していることを感じます。


属人的に任せていくやり方と、組織図をしっかり描いて部門単位で責任を割り振っていくやり方と、どちらが良いというものでもないのかもしれません。ただ、属人的に任せるやり方はうまくいかなそうなイメージがありますが、少なくともZOHOやゴア・アソシエイツのような会社ではうまく回っているのです。というか、むしろ成功していると言ってよいでしょう。もちろん、どちらのやり方がうまくいくかは組織によるとは思います。


属人的な組織におけるコミュニケーションのコツ

そんなわけで、こうした組織においては、誰に聞くのが良いのかを把握するのが一番大事です。これが開発センターとのコミュニケーションのコツの第一です。この本でも、交換記憶が成立するための心理的前提として次のように述べられています。

「相手が何を知っているかを十分知ること」p256
「相手の専門知識を信頼できるまで相手を知りつくすこと」p256



コミュニケーションをとって、一旦信頼関係を築けると、その後の仕事の進みが劇的にスムーズになります。逆に、組織体組織という考え方で、メールベースで無機質に依頼事項だけを投げていてもうまく進みません(往々にして無視されますorz)。


このあたりで体感しているコツと、交換記憶について述べられているところの話が重なって非常に面白かったのでした。でも、このコツやスキルって、うちやゴアのような会社じゃないと活用しづらいのかなー、ポータブルなスキルではないのかなーとも思ったりして、どうしよっかなーと思いつつ、ま、とりあえず今は今の組織でしっかりコミュニケーションとっていけばいっかと思っている今日この頃です。

ミッションを取り戻すことの大変さと大切さ、仕事の意義付けの重要性(「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの12の教え方」より)




ディズニーの人材育成の考え方と仕組みについての本。ほとんどは、アルバイトや新入社員など比較的経験の浅いメンバーに対する指導や育成の方法について。目次もこんな感じです。

  • 育てる前に教える側の「足場」を固める
  • 後輩との信頼関係を築く
  • 後輩のコミュニケーション能力を高める
  • 後輩のモチベーションを高める
  • 後輩の自立心・主体性を育てる


内容は、教育という観点からはそんなに目新しいことは多くはないと思いますが、改めて大事なポイントを認識するのに役立ちます。それらのことをきっちりやっているのがすごいんだと思います。


自分が大事だと思ったポイントはあらかたこちら(ゆきらん|「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの12の教え方」)にまとまっていますので割愛し、特に印象に残ったエピソードを2つメモしておきたいと思います。


1つはミッション、もう1つは仕事の重要性に関するエピソードですが、両方とも、その仕事を行う本人による仕事の意義付けという点では共通しています。以下、それぞれのエピソードについてです。

「間違った考えに染まった後輩を変える!」

まず1つ目のエピソードは、本来のミッションが忘れられていた場合の例として挙げられています。具体的には、著者が、ジャングルクルーズからカヌー探検というアトラクションに責任者として赴任した時のエピソードです。本来のミッションが失われている職場で、ミッションに対する意識をどう取り戻していったかという過程が描かれています。

異動前と異動後の職場

ジャングルクルーズの職場
上下関係は同じように厳しいものの、ゲストに楽しく笑ってもらうナレーションを競い合ったりしていた。
ゲストにハピネスを提供するというミッションにしたがって全員が役割をこなす。


カヌー探検の職場
ゲストにハピネスを提供するというミッションがあまり感じられず。
「カヌーを漕ぐ」こと自体が目標となっている様子。

ミッションが見失われていく過程

著者は、カヌー探検の職場でカヌーを漕ぐことが強く意識されるようになった理由について次のように考察しています。


カヌー探検の仕事は、たいへんきつい仕事で、自然条件が悪くても運営を中止しない
仕事のつらさに耐えきれず、せっかく仕事を覚えても長く続かないキャストが多かった
そこで、前の責任者が「体を鍛えるつもりでカヌーを漕ごう」とキャストを励ました

キャストが「そうか、そう思って仕事をすればよいのか」と考えた
そこにつらい仕事を克服する道を見出した

次第に、「カヌーを漕ぐ」ことが自分たちのミッションとしてキャストの心に強く刻まれた

カヌー探検のゲストは「カヌーを漕ぐ」ことを楽しむためにやってきたのだと思い込むようになった


こうして風土ができあがっていたところに著者が赴任してきたのですが、配属されて数カ月たった頃に大きな事件が起きました。ゲストからのクレームです。


ある日、親御さんと子供のグループがカヌー探検に参加

多くの子供が、カヌーを漕ぐよりも川の水面をピチャピチャたたくことに夢中に

それを見たキャストは、最初は「みなさん、漕ぎましょうね」とやさしく声をかける

しかし、子供たちはいっこうに言うことを聞かず

だんだんきつい調子

最後には、キャスト用の長いパドルで、パチャーンと水面を強くたたく行動

ゲストにとってはショッキングな出来事で会社にクレーム


これを受け、著者は、キャストの意識改革を決意しました。しかし、すぐに成果は出ず。1度できあがった風土を変えるのは容易ではありませんでした。


キャストは50人いましたが、当初は50対1のようにとらえていたそうです。50人の中には、賛同してくれる人もいたかもしれませんが、先輩の前ではそれを公にはしづらいこともあり、50人全員から嫌われているのではないかと疑心暗鬼になっていました。孤独を感じ、胃潰瘍にもなり、辞めようとも思ったそうです。しかし、「自分は間違っていない」という信念で続けたのです。


ここで大事なのはどのように訴えていったかという点です。
既存のキャストに対して
繰り返しメッセージを伝える。
一方的に訴えても絶対に受け入れられないので、自分たちで考えてもらう。
「ほんとうに大事なものは、いったい何か、自分で考えてみてほしい」と口癖のように繰り返す。
時には飲みに誘って大激論。


新しく入ってきたキャストに対して
ミッションをもとにした考え方を教え込む。
「すべてのゲストにハピネスを提供する」
「カヌーをとおして、ゲストに楽しんでもらうことが、私たちの仕事なんだよ」
と徹底的に教え込む。
最初は自分のみがトレーナーを行い、後でもそういう気持ちを持っているキャストにしかトレーナーを任せず。


こうした努力が実を結び、賛同者も少しずつ増え、1年くらいかかって職場全体の意識をひとつになっていきました。ただ、中にはどうしても賛同できない人はいました(異動や退職せざるを得ないキャストも何人かいたそうです)。しかし、ほとんど全員のキャストが伝えてきたことを受け入れてくれる状態ができあがりました。


この過程を経ての著者の
「人間って変わるものなんだ」
という実感をこめた言葉が印象に残りました。


著者はこう結んでいます。

「たったひとつの職場でも、ミッションや方向性を間違えると、会社全体を窮地に追い込んでしまいかねません。
 現に、ひとつの職場が本来のミッションから遠く離れて、効率を重視したあまり、顧客の信頼を損ね、結果的に会社が倒産に追い込まれたようなケースがたくさんあります。」(p115)



仕事に意味を見出すという点では、前任者も著者も一緒。しかし、選んだ言葉や伝えた内容がミッションから降りてきたものかどうかが異なっていました。前任者の言葉は、ゲストにハピネスを提供することからではなく、自分達にとっての意味から出発したものになっていました。


このため、ゲストが、自分達が重要視していた「カヌーを漕ぐ」ことから外れた行動をとった時に、ゲストのハピネスが忘れられてしまったのではないでしょうか。「ゲストにハピネスを提供する」ということから出発していたら、水を叩くことをそのまま楽しませるとか、楽しみを失わせない形でカヌーを漕ぐことに興味を持たせるとか(あんまり僕は良い方法思いつきませんが…)、別の手だてがとれたかもしれません。ただ、こうした失敗の経験を経て、良い方向に転換させていっているのがさすがだなと思いました。


「仕事の重要性を認識させる」

もう1つのエピソードは、カストーディアルの話です。カストーディアルとは、いわゆる清掃担当の職務のことです。1日中パークの清掃をする「きつい、きたない」の2K職場とみなされて、アルバイトの募集をしてもほとんど集まらず、オープンして数年間は最も不人気な職場だったそうです。


アルバイトに限らず、新入社員もカストーディアル課配属になると泣き出す始末。
「どうして、私が清掃をしなければいけないんですか。清掃を担当しているなんて、友達にも言えません」
とも言われていたそうです。さらに、父親から「娘に掃除をやらせる気か」というクレームもあったそうです(ただ、これはさすがに親が行き過ぎだと思いますが…)。


しかし、このカストーディアルが数年後には人気職種になるのです。変化の最も大きな力となったのは
「上司・先輩が、後輩たちにカストーディアルの重要性を繰り返し繰り返し伝えたこと」(p167)。


具体的には次のような言葉で、重要性を伝えていったそうです。

「カストーディアルというのは『清掃担当』という意味じゃないんだ。カストーディアルには『管理する』とか『保護する』という意味があるんだ。
 カストーディアルは、自由にパーク内を動きまわることができるでしょ。だから、当然、困っているゲストを見つける機会も多くなる。
 そういうとき、そのゲストに声をかけて、困っていることを解消してあげる大切な役割を担っているんだ。清掃だけじゃないんだよ。
 つまり、カストーディアルには、パークを清潔に管理する、ゲストを保護するという意味が込められているんだよ」(p167)



こうした言葉を受けて、後輩たちの気持ちが変わっていき、自分たちの仕事に誇りを持つようになりました。その他にも会社としてカストーディアルを重要視する姿勢を各所で表現しています。例えば、新人研修の1カ月をカストーディアル実習にあてているそうです。新入生社員もやるということは重要な仕事なんだなというメッセージをアルバイトに伝えることがねらいです。


さらに、アルバイト感謝デーでは、社長がカストーディアルを務めます。これも同じく、カストーディアルの仕事の重要性を伝えるメッセージとして働きます。カストーディアルの仕事を担ってくれているキャストに感謝していることがアルバイトに伝わるのです。


こうした取り組みにより、カストーディアルは人気職種になりました。意欲的に取り組むキャストが増えたことで、仕事の内容もさらにレベルアップしていっています。具体的には、落ち葉でミッキーマウスの顔を作ったり、ローラーブレードで清掃したりとショーアップ化が図られています。


やっている本人たちも見ている人も両方楽しめるような仕事になっています。これらの取り組みは、ほとんどアルバイトたちが考え出したそうです。メディアにも取り上げられ、カストーディアル人気をさらに高めることになり、良い方向での循環が回っています。


仕事の重要性を口でちょっと言っただけではなかなか浸透しません。こう書くと、当たり前のような気がしますが、これがなかなか自分もできていません。しつこいくらいに繰り返し繰り返し伝え、さらに、それを言葉だけでなく仕組みや行動で具体的に表現していくことをしてようやく浸透していくものだと思います。これを徹底しているのがすごいところなんじゃないでしょうか。


また、最初にも述べた様に、仕事の意義を仕事を行う本人がしっかり理解することの重要性と言う点は両方のエピソードで共通だと思います。ミッションからおりてきた仕事を、誇りを持って楽しんで取り組む。そうした意義付けをできるようにしていきたいです。


なお、先のカストーディアルの仕事について先輩たちが後輩に向けて伝えた言葉を見て、NASAの清掃担当の人の話を思い出しました。「ジョイ・オブ・ワーク―組織再生のマネジメント」という本に載っていた話です。廊下を掃除していた老人に「あなたの仕事はなんですか?」と質問したところ、ある老人は

「私たちの仕事は、この汚い廊下を毎日掃除することですよ。みんな汚く汚してしまうので、嫌になっちまいますよ」

と答えました。別の老人に質問したところ、

「私たちの仕事はね、人を金星に行かせることですよ」

と答えました(吉田耕作「ジョイ・オブ・ワーク―組織再生のマネジメント」p32より)。
似たような話でよく壁を作っている人の話も出されますが、このように、意義付け次第で同じことやってても全然違うもんだなーと改めて感じました。


エピソードについては以上ですが、以下1つだけ疑問に思った点です。

本当にどんな人材でも育てられるのか?

興味深かったのは、キャストの採用に関してはどんな人でも基本的にはウェルカムであるという話です。本書の出版社紹介でもリッツ・カールトンと対比して次のように述べられています。

昨年、過去最高益を出したディズニーランドでは、9割のスタッフが正社員ではなく、アルバイトでアトラクションを運営しています。
しかし、アルバイトでも最高のサービスを提供し、ディズニーランドは他の遊園地とは異なる、そして不況にも負けないブランド価値をつくりあげていますが、その背景には徹底したディズニーの社員教育システムがあります。
また、人材レベルの高さといえば、リッツカールトンとディズニーが有名ですが、この2社には、
●リッツカールトン:人の「素質」を見極める(=社員のポテンシャル重視)
●ディズニー:どんな人材でも育てることを重視する(=教育重視)
という決定的な差があるのです。どんなにCSを高めようとしても、その前段階の社員教育が成功なくしてCSは成り立ちません。

しかし、やっぱりどんな人でもというのは限界があるという気もするのです。もちろん、ある程度は育成でカバーできるとは思うのですが、素質や適性がある人を採用した方が育成にかかるコストも少なくて済むので、やっぱりそうした人を優先してとると思うんですが、そのあたりはどうなのかなと。


今となってはブランド力もあり、応募者が多いので選抜も比較的しやすいのかなとも思いますが、最初の頃はどうだったんでしょうか。この説明の通り、どんな人材でも育てることを重視するということであれば、最初から一貫しているのかもしれません。その点では、うちの会社の社内大学の仕組み(学歴非重視で自社での教育を重要視)とも近い気がするので、そのあたりはまた機会を見つけて調べてみたいと思います。

第4回リベラルアーツ教育によるグローバルリーダ育成フォーラム「5000年史 Part. 3」のまとめ

5月21日に行われた「第4回リベラルアーツ教育によるグローバルリーダ育成フォーラム」のまとめです。


※内容に間違い等があった場合はすべて私の責任です。念のため。

講演の概要

講演者:ライフネット生命保険(株) 出口治明 代表取締役社長
講演タイトル:『5000年史 Part. 3』


以下、講演の内容です。


今回の講演対象期間

5000年史 Part3 AD元年〜500年



歴史を学ぶ意味

ヘロドトスの「歴史」
自分で歩いて見聞きした物事を書いた。
書いた動機→愚かな人間が愚かなことを繰り返さないように、先祖が何をやったのかを書き留めておきたい。
これに歴史とは何かが突き詰められている。



1. AD元年のGDP

漢 26.2%
インド(各国) 32.9%
パルティア 9.7%
ローマ 17.2%
倭(日本) 1.2%



これをみると、ローマが特に突出していたわけではない。
なぜパルティア相手に苦戦したかが分かる。
インドが大きいのは交易のキーポイントであったため。お金持ちの間を仲介。



AD最初の100年

2.イエスの運動と上座部仏教の活性化

エスの刑死(30?)とパウロの回心(34?)

エスが行ったのはユダヤ教の革新運動。アラム語で行った。
パウロが説いたことがキリスト教の教えの基本。
パウロギリシア語も話せた。当時のリンガ・フランカ。
このため、教えの対象がユダヤ人に限らない。



大乗仏教運動

観音…ヴィシュヌを借りてきたもの
般若、華厳、浄土、法華…勝手にお経をどんどん書く。色んなことをでっちあげ始める。
大乗非仏教…大乗仏教は、古典的な仏教を学んでいる人から非難をあびる



3.新と東漢とクシャーン朝

王莽と新の評価

王莽の簒奪(8)…禅譲の始まり
王莽…気違いみたいな人。儒教の精神に凝り固まっている
→すぐに殺されてしまう



新の評価
これまではバカな王様という評価
→最近見直し。東アジア冊封体制の確立。東アジアにとって重要なことを行ったという評価
 中華思想を東アジアに広めるベースとなった。



中華思想とは

周が漢字を独占し、輝かしい歴史を書いていた
その頃は漢字を読める人は少ない
周の滅亡→金文職人がクビになった→地方の王様のところに移動
→先祖が昔もらったものを読んでくれということになる
→読んでみるとすごいことが書いてある
→周の王様すごいということになる
中華思想の始まり



インドの状況

ずっと小さい国同士の争いが続いていた
クシャーン朝の成立(65)
←大月氏の一族



仏像の成立(100?)
カニシュカ1世(128-151?)
首都はプルシャプラ、マトゥーラ
2つの領域をおさえたことが重要



インドの歴史→2つの中心がある
アフガニスタンからパキスタンインダス川の上流
ガンジス川中流域。ブッダが生まれたところ。
この2つを仕切れるのが大帝国
ほとんどはどちらかしかとれなかった



4.人類の最も幸福な時代と三国志時代

五賢帝時代とゲルマン民族

新約聖書の成立(60-90年代?)
五賢帝(96-180)
ギボン(ローマの平和)
五賢帝の最後の皇帝はウィーンで死んだ
これはなぜか。ゲルマン民族が押し寄せてきているから守らなければならない。



三国時代孔明の評価

黄巾の乱(184)
2世紀後半からユーラシアは寒冷化→玉突き運動、東と西に移動。
鮮卑の檀石槐による大帝国



魏の建国(220)
蜀(漢)(221)
呉(222)
三国志演義…日本の神皇正統記のような感じ
書かれた時代背景を反映して朱子イデオロギーに満ちている
孔明がすごい人のように描かれているが、実際は蜀・呉は地方政権に過ぎず、魏とかなり力の差があるのに戦わせたけしからん人間



晋の建国(265)
司馬氏による



サーサーン朝の建国と善悪二元論

サーサーン朝の建国(224)
エデッサの戦い(260)
マニ(216-276?)…踊ったりして教えを説く
善悪二元論がなぜ強いか
一神教の弱点を克服しているから
弱点…神様は全知全能なはずなのになぜ苦労するようなことがあるのか
最後は善が勝つけど、それまでは善と悪がたたかっているため、そういうことが起きるという説明
→時間軸を持ち込むことによって弱点を解決。最後の審判という概念を持ち込んだ。



5.ユーラシアの大変動

ローマ帝国の分裂

一言で言えば、西を捨てて東を救う
ローマの中で一番豊かなのはエジプトからシリアにかけて
テトラルキア体制(ディオクレティアヌス即位 284)
2人の皇帝、2人の副帝、4人でなんとかゲルマン民族の大移動を防ごうという体制
←東と西が分かれるベースが築かれた



キリスト教の広まりとその影響

国難の中で宗教が力を持つ
宗教は貧しい人のアヘン
キリスト教が広まった
ミラノ勅令(313 リキニウス)
どんな宗教もOKということを確認した



ビュザンティオンへの遷都(330)
テオドシウスによるキリスト教の国教化(380)と古代オリンピックの終焉
なぜ遷都したか…道がズタズタにあってネットワークが崩れる
道のネットワークが崩れた時に、どうやって国を保つかというときにキリスト教のネットワークを使う
キリスト教の国教化



ただし、キリスト教は偏狭な精神、途端に焚書・幸寿
ユスティニアヌスのとき、大学ですらキリスト教以外教えられなくなる
古代オリンピックの終焉



ではなぜ現在プラトンアリストテレスを読めるか
ヘレニズムは東西に拠点…ササン朝ペルシア、西の拠点に残っていた
ムスリムを通じて後の時代に再輸入



グプタ朝

グプタ帝国(320)
詩聖カーリダーサ・ナーランダ僧院



5胡16国時代

(東)晋の建国(317)
北が荒れる→南で豊かな文化
六朝文化+グプタ帝国+五賢帝 BC500まで豊かな文化



秦の苻堅とユリアヌス

立派な人、理想家肌
降伏した武将を一人も処罰しなかった
〓水の戦い→東秦に負ける
なぜ負けたか…許した人が全部寝返った
ここで統一の芽が出たが結局統一できず
→しばらく2つに分かれたまま


6.拓跋帝国の始まり

(北)魏による華北統一(439)
柔然の社崙が可汗に(402)
[劉]宋の建国(420)南北朝時代
→南もそれなりにまとまる



仏教の弾圧と変質

武帝寇謙之による仏教の弾圧(446)
後に三武一宗の法難と呼ばれる苦難の第一
4回大弾圧があったが、この時は道教がだんだん民間に広まってきていた時期
儒教、仏教と同じくらいの力を持つように



武帝が死ぬと仏教も盛り返す
仏教の変質
鳩摩羅什長安に(401)
皇帝は仏、官僚は菩薩という考え方
雲崗の石窟…全部皇帝の絵姿
文成帝(452-465)と仏僧曇曜



なぜ仏教だったか
拓跋・鮮卑は中国人ではない
その中でどのように国を作って治めていることに対する理屈をつける必要がある
中国人なら易姓革命で説明がつくが、中国人ではないので説明がつかない
→仏教を使う

これや!!
華厳→皇帝→仏
官僚→菩薩



太后と孝文帝(471-499)による漢化政策

きわめて優れた皇后
均田制を開始
隋・唐の世界帝国のベース
なぜ漢化政策
→自分達が漢民族になったら易姓革命が使える。説明がつけやすい。
 洛陽に遷都
 鮮卑・拓跋が大きくなるベースとなった(隋・唐も)



タクバチュと女性と部

中央アジアの異民族
→中国をなんとよぶか…キタイ
キャセイ航空のキャセイ
キタイは契丹から来ている



契丹ができる以前は何と呼んでいたか
タクバチュと呼んでいた
十字軍をフランクと呼んでいたことと同じ
拓跋帝国とフランク帝国
民族大移動によって作られる
同じ時期に作られ、滅びる
拓跋帝国では女性の地位が高い



この頃日本の書に「部」という感じが出てくる
→拓跋の影響が大きい



7.フランク王国

アラリック(西ゴート)によるローマ占領(410)
←東を守って西を捨てる
ローマの西側は大変な目に遭う



西ゴート王国(415)
エフタル、バクトリアに侵入
→グプタ帝国、ササン朝を悩ませる



ヴァンダル帝国(429)
アッティラの即位(434)
イタリア侵入(452)
フン族匈奴であろうということが分かっている



レオ1世(440-461)
事実上の初代教皇



オドアケル、イタリア王に(476)
昔の教科書では、これにより西ローマ帝国が滅んだと言われているが
たまたま殺されただけ
元々西はすでに見捨てられていたので476年という数字に特に意味はない



クローヴィスのフランク王国
フランク王国を完成させる
481メロヴィング朝
496改宗
北魏の洛陽遷都(493)とほとんど一緒
既存の制度に合わせる
拓跋は漢化政策
フランクはキリスト教に改宗



オドリックの東ゴート王国(493)
テオドリックオドアケルをやっつける



8.まとめ

第4千年紀前半
2大宗教の誕生 



ユーラシアの寒冷化
 マルクス帝の死(180)と黄巾の乱(184)



5胡16国
 ゲルマン民族の大移動
 中国は南に、ローマは東に避難



インドとペルシアの安定
 ゲルマン民族の移動から離れていた
 グプタ朝、サーサーン朝



拓跋氏
 200年くらいかけて同化
 クローヴィスによるフランク
 孝文帝による拓跋



Q&A

寒冷化がキーワードとして出ていたが今は温暖化。どうなるのでしょうか?

一番大事なのは産業が何か
商・工業がおこると気候は関係なくなる
ヨーロッパの歴史…異民族をいかに撃退したか



その他

わかりにくいものはあんまり売れない、広まらない
宗教でも会社でも一緒



500年の中で一番好きなのは符堅とユリアヌス
時代は変わっているのに理想を追い求めている
ただこれは個人的な趣味
会社でやると社員はたまらないのでやりません。


まとめは以上です。
前回と同じく、タテにヨコに有機的につながっていくお話でとても面白かったです。
また、理想家肌の人が好きというお話が印象に残りました。
並行して「「思考軸」をつくれ」で紹介されている20冊を読んでいるのでまた歴史をみる眼の幅を広げていきたいと思います。

岡田武史さん講演まとめ

会社の人から岡田武史さんの講演会の席があるから行かないかと聞かれ、2つ返事で行ってきました。メモったことを備忘のためにまとめておきます。

震災について

自分に何ができるかということを考えて悩んでいた。車にサッカーボールと物資を積んで、協会の人と2人で代わりばんこに運転しながら被災地に行って、サッカー教室を開催した。参加した子供たちは最初は心を閉ざしていたが、1時間もサッカーをしていると笑顔になってきた。子供が元気になると大人が元気になっていた。スポーツの力はすごいと感じた。


日本全体がダメージを受けている。ニュースも暗い話ばかりだが、子供を明るくすることで元気になっていけば。


積み上げ

レンガの話
レンガを縦にずっと積んでいっているだけだと壊れてしまう。どこかの時点で横に積む必要がある。しかし、横に積む人は評価されない。岡田監督がチームを引き継いだ時にそれまでの監督の積み上げがあった。ジーコも横に積んでくれていた。


ゾーン

2010年ワールドカップのチーム

経験したことのないチームになった。4連敗してマスコミが叩いてくれたおかげでああいう形になった。カメルーン戦の前日、良い試合をするなと感じた。勝った瞬間に特殊な状態に入った=ゾーンに入った。ハーフタイムにロッカーから戻ってきて何か言おうととして選手の様子を見たら、皆分かってますという様子。
1か月のキャンプでけが人、熱を出した人などの病人もゼロ。これはすごいこと。


岡田さん自身の経験

インドでの韓国との試合のときに左足ですごいミドルシュートを決めた。風間八宏からパスを受けたところまでは覚えているが、気づいたらネットにボールがピタッと止まっていた。その後いくら練習してもだふっていた。



信じ切る

試合に勝つと言っている時、信じよう信じようではなく、信じ切ってますという状態。浦和レッズとのチャンピオンシップのとき、3日間のミニキャンプを開催。
その時に選手に向けて言った言葉↓
残念ながら今の時点ではレッズの方が力が上だ。しかし、勝つ方法はある。一回しか使えないが、これしかない。ホーム&アウェーで1試合目はどんなにたたかれようが0-0で乗り切り、2試合目にその手を使おう。


ところが…
1試合目にその手で買ってしまった。本当は0-0の想定。みんな喜んでいたが、自分はどうしようと真っ青になっていた。


ただ…

グラウンドでの練習をみていると、すばらしい練習をやっている。笑顔だが、たるんでいるのではなく、ピリッとした雰囲気。「オレ勝つな」とふと感じた。



迎えた埼玉スタジアムでの第2試合。試合は選手が1人退場し、0-1になったが、勝つと思っていた。そうしたらトータルで1-1になり、延長戦に突入した。いつもならいろいろ細かい指示を出していたが、行って来いとしか言わなかった。選手たちもきょとんとしていた。


延長戦はVゴール式でPK戦が無かった。延長戦終了間際、トゥーリオがすごいヘディングでシュートを打って、ベンチは総立ちになった。岡田さん1人だけ座っていた。オレは勝つんだからここでシュート入ったら勝てねえじゃんと思っていた。


自責

パラグアイ戦も勝つと信じ込んでいた。タイムアップの瞬間から何で勝たしてやれなかったのかとずっと考えた

→勝利への執着が自分に足りなかったという結論。


何のため

何のためにこんな割に合わない仕事をしているのか。自分のためももちろんある。いろいろあるけど、一番はチームのスタッフ、家族を喜ばせてやりたい。これが、日本中のサポーターを喜ばせてやりたいと思っていたら勝てたかもしれない。リーダーのスケールはそういうところから出てくるのかもしれないと思う。


チームのために

23人の選び方。うまい順に23人並べても勝てない。23人いると、試合に出られない人が出てくる。そこを踏まえた上でどういう人を選ぶか。


川口の話
スタメンから外したのは岡田さん。次第にチームからも外した。しかし、ジュビロの監督に電話をして様子を確認していた。話を聞くと、「ヨシカツは失っていない」とのこと。そこで選んだ。ワールドカップメンバーの中で非常に重要な役割を果たしてくれた。部屋を回って何か問題ないかなどと聞いてくれていた。


俊輔と楢崎の話
2人ともワールドカップにかけていた。それを知っていたが、レギュラーからは外した(岡田さんいわく「鬼の所業」)。しかし、その後の2人の行動が素晴らしかった。普通は外された後は部屋にこもって出てこなくなったりする。2人はリラックスルームに出てきて皆と一緒にビデオを見たりしていた。練習では率先してガンガンやる。これにより、若い選手はサボれない。試合に出ている選手もガンガンやる。


中澤の話
キャプテンから外した。理由はいろいろあるが、その1つとして俊輔や楢崎と親友だったことがある。シュンとナラが外れてチームを引っ張っていけるかということを考えたときに、中澤は優しいところがあるのでなかなかそうはいかないかもしれない。そこで長谷部をキャプテンにするということを告げた。本人もいろいろ思うところがあったとは思うが、翌日からの練習でも先頭で走って皆を引っ張っていってくれた。


開き直る

フランスワールドカップの時の経験
脅迫されて警察に警備されていた。子供の送り迎えも車でやっていた。食べ物をもらっても怖くて食べられなかった。


ジョホールバルの前日。もし負けたら日本に住めなくなるかもと奥さんに電話していた。でもちょっと待てよと考えた。日本のサッカー界を自分一人では背負えないと開き直った。自分は持ってる力を出して精一杯やる。開き直ったら完全に怖いものがなくなる。これでダメだったらおれのせいじゃない、おれを選んだ会長のせいだと考えた。


遺伝子にスイッチ

遺伝子にスイッチが入った。今、安全・便利・快適な社会で生活しているので生きる力が落ちているのではないか。家畜と一緒。子供の頃は鉄橋とかを渡って危ないこともしていたが、そういう時に脳にスイッチが入った。


地震が起きた後、若い人が積極的に行動を起こしている。若い人が悪いわけではない。我々が作ってきた社会が遺伝子にスイッチを入れるチャンスをなくしてきたのではないか。じゃあどうするか。スポーツや文化。目標を作ってチャレンジする機会を作る。


リーダーの資質

田坂広志さんの言葉
一番大事なのは登るべき山を持つことだ。夢、ビジョンを掲げて山を必死になって登っている、その姿をみて人はついてくる。聖人君子に人がついてくるわけではない。登るべき山に、何のために登るのかということを考えていくことが大事。


監督の仕事

最終的に監督の仕事は1つ、決断すること。この選手を使ったら勝率50%、60%というふうにはならない。コーチに聞いて多数決で決まるわけではない。たった1人で責任を背負って決断しなければならない。
論理的に考えて答えが出ないならどうするか→勘
経験を積むと勘をとる勇気が出てくる。勘をとるにはコツがある。こんなことをしたら選手がふてくされるのでは、マスコミに叩かれるのではとか考えたらダメ。すっと座って素の状態になってふっと浮かんだ方をとる。それをとったらとった後は振り返らない。そうすると結構当たる。
ただ、そうそうは素の状態にはなれない。でもどん底を知っているとそれに近い状態になれる。経営者でも戦争や闘病などの極限状態を経験している人はそういう能力がある。


決断

決断するときは素になって私心が無いように決める。
池宮彰一郎「義、我を美しく 」という本があるが、決断する時は、「おれの生き様って美しいかどうか」と自分に向って問いかける。
義、我を美しく (新潮文庫)

義、我を美しく (新潮文庫)



選手とのコミュニケーション

選手とは酒を飲まない。奥さんを知ってて仲人をして、外すということはようできない。最終的には誰かを外さざるを得ない。その時に外すことができるように。自分の弱さを知っているので一線を引く。


覚えているのが、ジーコがワールドカップメンバーを選んだ時に、久保の家族がマリノスのクラブハウスに来ていた。娘が「ジーコ、大っきらい」と叫んでいた。たぶん今回も「岡ちゃん、だいっきらい」と叫ばれていただろう。



選手に愛情はもっていないといけないが、媚を売るのではない。選手に伝えること。お前のことは能力あるから呼んでいる。ただ、おれは自分の考えにもとづいて決断する、それで納得がいかないなら、あきらめるから出ていってくれと伝える。どんな有名選手に対しても一緒。


チームで大事なこと

  • 目標設定
  • フィロソフィー
  • チームモラル



チームモラル

コンサドーレ時代の話
ロッカーがごちゃごちゃで良い練習ができるはずがない。新年度を迎えるに当たってロッカーがきれいになっていたけど、名札は去年のまま。この状態で、本気で今年はさあいくぞと思えるか、思えない。クラブの人を呼んで話をした。


マリノス時代のコーンを回る練習の話
コーンの外側を走る練習だが、当初、3分の2が内側を走っていた。外側を真面目に走るなんて格好悪いという雰囲気があった。選手に、なんで外側を走るのか聞くと、内も外もそんなに変わらないという答え。内も外も変わらないんなら外を走れと伝える。


ただ、ここで、各コーンにコーチを置いて監視してもしょうがない。皆が自然に外側を走るように持っていかなければならない。自然とそういう方向になるように工夫。例えば、有名な選手なら、「○○さんでも内側回るんだー」とか言ったり。必要に応じて怒鳴ることもある。


目標設定

2年先のワールドカップ、しかもその時に自分が選ばれるかどうかもわからない中でどうやってモチベーションを保ってトレーニングさせるか。

志。高い目標。
一緒にやってみないかと伝える。人生でこんな機会そんなにない。こういうことを皆にいっぺんに言うと、周りの顔をみて動かない。

最初に1人1人呼んで話をする。その後全員に同じことを繰り返す。ベスト4に行くという目標。そんなことやっててベスト4行けるかと繰り返し問いかける。


スタッフのコミュニケーションが良かったと言われ、その理由を聞かれるが、特に何もしていない。本気でベスト4を狙うことを考えたら、それぞれの人が動く。ホペイロがスパイクを磨きながら選手が元気が無いと感じたら、それを伝える。コックが選手が食べる様子を見ていて残す人がいたら、それを伝える。

もちろんさまざまなことを工夫して試している。成功法とかいろいろやらせてみる。でも一番大事なのは全員がそれを信じること。


フィロソフィー

代表チームのフィロソフィー

  • enjoy
  • concentration
  • our team
  • improve
  • do your best
  • communication

フィロソフィーについて毎回話す。


enjoy

今ボールいらないという選手がいるが、なぜボールをほしがらないか。プレッシャーを受けてミスをすることを恐れている。
→ミスを恐れるなと伝える。


究極のenjoyとは、自分の責任でリスクを冒すこと。


日本の選手は、監督がココにいろって言ったからココにいましたという。しかし、それではプロの選手とは言えない。でも今まではそういうチームづくりをしていた。理屈で選手を納得させて勝つのが得意だった。


マリノス時代、1年目完全優勝。ロボットとは言わないが、自分の言うとおりに選手を動かした。
2年目、自分の判断でやらせる方向でやったら開幕4連敗。あわてて1年目のやり方に戻したら間に合って2年目も優勝。
3年目は今度こそということでトライしたがうまくいかない。
4年目もこりずにやったが、うまくいかず、家族の病気を理由に途中でやめた。逃げた。


マリノスをやめてからメチャメチャ勉強した。
日本人のいいところ、悪いところ
外国人のいいところ、悪いところ
4つあるが、このうちの、日本人のいいところはなかなか皆みない。他の3つしかみない。


ワールドカップの監督を引き受けたのには悔しい想いがあった。日本人でももっとできるはず。


50代になって初めて、選手が自分で判断できるチームができた。指導や教育とはコップに水を入れていくようなもの。educationとはコップに入っているものを引き出してやること。無いものは気づかせてやる。いかに勝ちたいという気持ちを引き出してやれるか。これを引き出せないと、皆守りに入る。言われたとおりにやる。


our team

誰のチームか。自分のチーム。


コンサドーレ時代の話
0-1で負けている中で残り10分の時に、ライン際を走るサイドバックが自分の顔ばかりを見ている。どうも、チームは負けてるけど、おれは言われたとおりやってるますというアピール。ええかげんにせい。0-1は会社で言えばモノが売れなくて倒産しそうな状態。そんな中に経理でいくら素晴らしい計算をやってもしょうがない。外に出てモノ売ってこい。


人のせいにするということは受け身。日本中の上司、先生、監督が自分にとって都合が良いわけがない。


ミスターマリノスと言われた選手の話
自分のプレースタイルを頑固に持っていて、方向性が合わず、1年間やって使わなかった。今のままだと残っててもしょうがないかもしれないがどうするかと聞くと、やらせてくださいという話。2年目はプレースタイルをガラっと変えて、その選手が優勝に貢献した。


concentration

今出来る事を精一杯やる。ベスト4行きたいって叫んで行けるなら毎日でも叫べばいいしかし、毎日できることは、毎日のコンディションの調整、試合でベストをつくすこと。今考えてもしょうがないことは考えない。ミスしたらどうしよう、ミスしてから考えれば良い。


ともかく一歩踏み出してみる。カラオケ3曲、1月で覚えるとかでもいい。なにかやってみる。その場にいてああでもないこうでもないと言っててもしょうがない。遠くを見ててもしょうがない。


運をつかみそこねないように必死でやる。神は細部に宿る。


選手だって右肩上がりばっかりの人はいない。なんのために今落ちているのか→より高いところに登るため。ジャンプするときは一回しゃがむ。これはより高いところに行くため。


感想

講演はここまででした。フィロソフィーの話の途中で終わってしまったので残念でしたが、1時間半という時間は感じず、引き込まれて聞いていました。


特に印象に残ったのは、南アフリカワールドカップでベスト16での敗退についてのコメントです。勝てなかったではなく、勝たせてやれなかった。自分視点ではなく選手視点で語っているのが印象的でした。


責任は自分にあるのが大前提の考え方。選手が悪かったとか運が悪かったとか他責にせず、自責での考え方です。


ワールドカップ後のインタビュー等で執着が足りなかったという話を聞いた時に、えーっ…と思っていたんですが、他責を排した上でいろいろ考えに考えて出てきた結論だったんだなと感じました。選手はよくやってくれたんだから後は自分に何か原因があると考えて突き詰めて出てきた話だと思います。


あと、講演後にいろいろ検索していたところ、今回の講演の内容と同じような内容の講演記事を見つけました。記事ではきれいにまとめられていて読みやすいのでこちらも参照しておきたいと思います。
Business Media 誠:岡田武史氏が語る、日本代表監督の仕事とは