会議に効率性・生産性が必要でない時(「iモード」事件に学ぶ)

効率性や生産性をあえて求めない方が良い

以前会議をなんとか効率化しようとして、会議関連の本をたくさん読み漁ったことがあります。しかし、最近よく考えることですが、会議に効率性や生産性をあえて求めない方が良い場面があると感じています。


効率性や生産性が必要な場面とそうでない場面があるのです。こう書くと当たり前のような感じがしますが、しゃにむに効率化しようとしてもうまくいかないというか、逆効果になる時があるのです。

iモード立ち上げ時の会議の話

iモードを新規事業として立ち上げた時の話を元にした本、「iモード事件」にも次のようなことが書いてありました。コンテンツの検討をする際に、ドコモ外部から、放送作家、プロデューサー、シナリオライター等の人に集まってもらってブレストをやった時の話です。

「「会議」や「話し合い」に効率や生産性を重視する人にとっては、確かに無駄な会話にしか聞こえない。でも私はこんな無駄話から「これだ!」というものが出てきた瞬間に何度も出会っている。まだ何も始まっていないからこそできるこの柔軟な雰囲気を大事にしたかった。
 彼らと一緒に話をし、業界の打ち明け話を聞き、冗談を返したり、再びまじめな話に戻って喋っているうちに、脳がどんどん元気になっているのがわかる。」
松永真理iモード事件」p87)

ドコモの若手にとってはブレスト自体が初めての経験であり、マッキンゼーから入っていたコンサルタントも面食らう中、話題も人も入れ替わる中話が展開していきました。そんな中、何気ない会話の端に出てきた「コンシェルジュ」という言葉をキーワードとして拾い、方向性が見えてきたという話でした。


この感覚、すごくよく分かります。自分は新規事業に関わっているので特にそう感じるのかもしれません。会議を効率化しようとすると、余裕がなくなり、話が盛り上がっても無理に時間を区切ったりして、アイデアがしぼんだり、ちょっとぎくしゃくした感じになる時も出てきます。


イデアが重要な場面では、時間を区切らず、効率や生産性を気にせず、流れるままに会議を進めた方が良い場面もあると思います。「iモード事件」の別の場面でも次のような話がありました。これは、会議の司会進行をマッキンゼーの人からドコモの若手に変えた時の話です。会議の時間という意味での効率は悪くなったものの、他のメンバーから活発に意見が出るようになったことを踏まえての言葉です。

「すぐに答えは返ってこない。それでも榎は根気よく意見を聞きだしている。会議の時間はマッキンゼー主導のときより、だいぶ長くなっていった。
 長過ぎる会議は、効率を考えると決してベストとはいえない。けれど、こと新規事業においては効率だけを重視していると、事務的な連絡事項だけに終始してしまい、議題についてメンバーが真剣に考える機会がなくなる。事業が膨らんでいかないのだ。」
松永真理iモード事件」p115)

事務的な連絡事項だけに終始する会議は無味乾燥なものになってしまいます。相手の話を聞くだけで終わり、コミュニケーションが一方通行になってしまいます。これではチームで仕事をしている意味がかなり無くなってしまいます。


新規事業やプロジェクトのキックオフなど、お互いの意見やアイデアを交換しながら新しいものを生み出していく、そういった作業が必要な場面では、あえて会議の効率性を気にせずに進めていくことが大事なのではないかと感じています。


もちろん、会議の効率化がまったく必要ないかというとそうではなく、要は場面に応じた使い分けが大事なのです。話すことが決まっている定例会議などは、効率化した方が良いと思います。しかし、何を話すのかすら決まっていないような場面では、四角四面に型にはめてしまうのではなく、話をいろんな形に引き伸ばしながら進めた方が良いものを生み出せるのではないでしょうか。このトピックについてはまた今後も考えて行きたいと思います。