第4回リベラルアーツ教育によるグローバルリーダ育成フォーラム「5000年史 Part. 3」のまとめ

5月21日に行われた「第4回リベラルアーツ教育によるグローバルリーダ育成フォーラム」のまとめです。


※内容に間違い等があった場合はすべて私の責任です。念のため。

講演の概要

講演者:ライフネット生命保険(株) 出口治明 代表取締役社長
講演タイトル:『5000年史 Part. 3』


以下、講演の内容です。


今回の講演対象期間

5000年史 Part3 AD元年〜500年



歴史を学ぶ意味

ヘロドトスの「歴史」
自分で歩いて見聞きした物事を書いた。
書いた動機→愚かな人間が愚かなことを繰り返さないように、先祖が何をやったのかを書き留めておきたい。
これに歴史とは何かが突き詰められている。



1. AD元年のGDP

漢 26.2%
インド(各国) 32.9%
パルティア 9.7%
ローマ 17.2%
倭(日本) 1.2%



これをみると、ローマが特に突出していたわけではない。
なぜパルティア相手に苦戦したかが分かる。
インドが大きいのは交易のキーポイントであったため。お金持ちの間を仲介。



AD最初の100年

2.イエスの運動と上座部仏教の活性化

エスの刑死(30?)とパウロの回心(34?)

エスが行ったのはユダヤ教の革新運動。アラム語で行った。
パウロが説いたことがキリスト教の教えの基本。
パウロギリシア語も話せた。当時のリンガ・フランカ。
このため、教えの対象がユダヤ人に限らない。



大乗仏教運動

観音…ヴィシュヌを借りてきたもの
般若、華厳、浄土、法華…勝手にお経をどんどん書く。色んなことをでっちあげ始める。
大乗非仏教…大乗仏教は、古典的な仏教を学んでいる人から非難をあびる



3.新と東漢とクシャーン朝

王莽と新の評価

王莽の簒奪(8)…禅譲の始まり
王莽…気違いみたいな人。儒教の精神に凝り固まっている
→すぐに殺されてしまう



新の評価
これまではバカな王様という評価
→最近見直し。東アジア冊封体制の確立。東アジアにとって重要なことを行ったという評価
 中華思想を東アジアに広めるベースとなった。



中華思想とは

周が漢字を独占し、輝かしい歴史を書いていた
その頃は漢字を読める人は少ない
周の滅亡→金文職人がクビになった→地方の王様のところに移動
→先祖が昔もらったものを読んでくれということになる
→読んでみるとすごいことが書いてある
→周の王様すごいということになる
中華思想の始まり



インドの状況

ずっと小さい国同士の争いが続いていた
クシャーン朝の成立(65)
←大月氏の一族



仏像の成立(100?)
カニシュカ1世(128-151?)
首都はプルシャプラ、マトゥーラ
2つの領域をおさえたことが重要



インドの歴史→2つの中心がある
アフガニスタンからパキスタンインダス川の上流
ガンジス川中流域。ブッダが生まれたところ。
この2つを仕切れるのが大帝国
ほとんどはどちらかしかとれなかった



4.人類の最も幸福な時代と三国志時代

五賢帝時代とゲルマン民族

新約聖書の成立(60-90年代?)
五賢帝(96-180)
ギボン(ローマの平和)
五賢帝の最後の皇帝はウィーンで死んだ
これはなぜか。ゲルマン民族が押し寄せてきているから守らなければならない。



三国時代孔明の評価

黄巾の乱(184)
2世紀後半からユーラシアは寒冷化→玉突き運動、東と西に移動。
鮮卑の檀石槐による大帝国



魏の建国(220)
蜀(漢)(221)
呉(222)
三国志演義…日本の神皇正統記のような感じ
書かれた時代背景を反映して朱子イデオロギーに満ちている
孔明がすごい人のように描かれているが、実際は蜀・呉は地方政権に過ぎず、魏とかなり力の差があるのに戦わせたけしからん人間



晋の建国(265)
司馬氏による



サーサーン朝の建国と善悪二元論

サーサーン朝の建国(224)
エデッサの戦い(260)
マニ(216-276?)…踊ったりして教えを説く
善悪二元論がなぜ強いか
一神教の弱点を克服しているから
弱点…神様は全知全能なはずなのになぜ苦労するようなことがあるのか
最後は善が勝つけど、それまでは善と悪がたたかっているため、そういうことが起きるという説明
→時間軸を持ち込むことによって弱点を解決。最後の審判という概念を持ち込んだ。



5.ユーラシアの大変動

ローマ帝国の分裂

一言で言えば、西を捨てて東を救う
ローマの中で一番豊かなのはエジプトからシリアにかけて
テトラルキア体制(ディオクレティアヌス即位 284)
2人の皇帝、2人の副帝、4人でなんとかゲルマン民族の大移動を防ごうという体制
←東と西が分かれるベースが築かれた



キリスト教の広まりとその影響

国難の中で宗教が力を持つ
宗教は貧しい人のアヘン
キリスト教が広まった
ミラノ勅令(313 リキニウス)
どんな宗教もOKということを確認した



ビュザンティオンへの遷都(330)
テオドシウスによるキリスト教の国教化(380)と古代オリンピックの終焉
なぜ遷都したか…道がズタズタにあってネットワークが崩れる
道のネットワークが崩れた時に、どうやって国を保つかというときにキリスト教のネットワークを使う
キリスト教の国教化



ただし、キリスト教は偏狭な精神、途端に焚書・幸寿
ユスティニアヌスのとき、大学ですらキリスト教以外教えられなくなる
古代オリンピックの終焉



ではなぜ現在プラトンアリストテレスを読めるか
ヘレニズムは東西に拠点…ササン朝ペルシア、西の拠点に残っていた
ムスリムを通じて後の時代に再輸入



グプタ朝

グプタ帝国(320)
詩聖カーリダーサ・ナーランダ僧院



5胡16国時代

(東)晋の建国(317)
北が荒れる→南で豊かな文化
六朝文化+グプタ帝国+五賢帝 BC500まで豊かな文化



秦の苻堅とユリアヌス

立派な人、理想家肌
降伏した武将を一人も処罰しなかった
〓水の戦い→東秦に負ける
なぜ負けたか…許した人が全部寝返った
ここで統一の芽が出たが結局統一できず
→しばらく2つに分かれたまま


6.拓跋帝国の始まり

(北)魏による華北統一(439)
柔然の社崙が可汗に(402)
[劉]宋の建国(420)南北朝時代
→南もそれなりにまとまる



仏教の弾圧と変質

武帝寇謙之による仏教の弾圧(446)
後に三武一宗の法難と呼ばれる苦難の第一
4回大弾圧があったが、この時は道教がだんだん民間に広まってきていた時期
儒教、仏教と同じくらいの力を持つように



武帝が死ぬと仏教も盛り返す
仏教の変質
鳩摩羅什長安に(401)
皇帝は仏、官僚は菩薩という考え方
雲崗の石窟…全部皇帝の絵姿
文成帝(452-465)と仏僧曇曜



なぜ仏教だったか
拓跋・鮮卑は中国人ではない
その中でどのように国を作って治めていることに対する理屈をつける必要がある
中国人なら易姓革命で説明がつくが、中国人ではないので説明がつかない
→仏教を使う

これや!!
華厳→皇帝→仏
官僚→菩薩



太后と孝文帝(471-499)による漢化政策

きわめて優れた皇后
均田制を開始
隋・唐の世界帝国のベース
なぜ漢化政策
→自分達が漢民族になったら易姓革命が使える。説明がつけやすい。
 洛陽に遷都
 鮮卑・拓跋が大きくなるベースとなった(隋・唐も)



タクバチュと女性と部

中央アジアの異民族
→中国をなんとよぶか…キタイ
キャセイ航空のキャセイ
キタイは契丹から来ている



契丹ができる以前は何と呼んでいたか
タクバチュと呼んでいた
十字軍をフランクと呼んでいたことと同じ
拓跋帝国とフランク帝国
民族大移動によって作られる
同じ時期に作られ、滅びる
拓跋帝国では女性の地位が高い



この頃日本の書に「部」という感じが出てくる
→拓跋の影響が大きい



7.フランク王国

アラリック(西ゴート)によるローマ占領(410)
←東を守って西を捨てる
ローマの西側は大変な目に遭う



西ゴート王国(415)
エフタル、バクトリアに侵入
→グプタ帝国、ササン朝を悩ませる



ヴァンダル帝国(429)
アッティラの即位(434)
イタリア侵入(452)
フン族匈奴であろうということが分かっている



レオ1世(440-461)
事実上の初代教皇



オドアケル、イタリア王に(476)
昔の教科書では、これにより西ローマ帝国が滅んだと言われているが
たまたま殺されただけ
元々西はすでに見捨てられていたので476年という数字に特に意味はない



クローヴィスのフランク王国
フランク王国を完成させる
481メロヴィング朝
496改宗
北魏の洛陽遷都(493)とほとんど一緒
既存の制度に合わせる
拓跋は漢化政策
フランクはキリスト教に改宗



オドリックの東ゴート王国(493)
テオドリックオドアケルをやっつける



8.まとめ

第4千年紀前半
2大宗教の誕生 



ユーラシアの寒冷化
 マルクス帝の死(180)と黄巾の乱(184)



5胡16国
 ゲルマン民族の大移動
 中国は南に、ローマは東に避難



インドとペルシアの安定
 ゲルマン民族の移動から離れていた
 グプタ朝、サーサーン朝



拓跋氏
 200年くらいかけて同化
 クローヴィスによるフランク
 孝文帝による拓跋



Q&A

寒冷化がキーワードとして出ていたが今は温暖化。どうなるのでしょうか?

一番大事なのは産業が何か
商・工業がおこると気候は関係なくなる
ヨーロッパの歴史…異民族をいかに撃退したか



その他

わかりにくいものはあんまり売れない、広まらない
宗教でも会社でも一緒



500年の中で一番好きなのは符堅とユリアヌス
時代は変わっているのに理想を追い求めている
ただこれは個人的な趣味
会社でやると社員はたまらないのでやりません。


まとめは以上です。
前回と同じく、タテにヨコに有機的につながっていくお話でとても面白かったです。
また、理想家肌の人が好きというお話が印象に残りました。
並行して「「思考軸」をつくれ」で紹介されている20冊を読んでいるのでまた歴史をみる眼の幅を広げていきたいと思います。